2015/07/01

魔性のキャメル


現在のオマーンと南イエメンにまたがってマフラと呼ばれる人名からとった地名があります。

そこには、馬にも負けないスピードと、容易には疲れない耐久力を持ったラクダがいました。
そのラクダを育て上げた人物がヒムヤル王朝時代の族長マフラ・イブン・ハイダーンという人物でした。
(西暦300年頃サンアーを王都に第二ヒムヤル王朝が興り、イエメンの大部分を治めていた時代らしい。フムヤル王朝は572年ペルシアの征服軍により滅亡。)

ルブウ・ル・ハーリーの大砂漠の中に、イブリーンという秘境があり、
そこにはもともと野生のラクダや人間の管理から放たれた野生ラクダがいました。
そこに生息するフーシュとよばれる狂暴な雄ラクダは荒野の魔精ジンの飼いラクダと信じられてたそう。

マフラは交尾期が近づくと、地理的に近いイブリーン地域に自分の所有する雌ラクダを足枷をつけたまま放し、何日かしたら、連れ戻しにいき、妊娠した雌ラクダを大事に扱い、出産したラクダは俊足で疲れを知らないマフリー種として育てあげていました。

砂漠の旅おいて、このマフリー種は、乗用として最も優れており、どの地域でも需要が多く、商品価値も高くついていました。
マホメットもこのラクダが欲しくてたまらず、戦いの勝利の後の戦利品の代価としてムフリーラクダを購入ていたほど。

マフラという地域は海にも接しており、この付近一帯は漁業も盛んで、干した魚は内陸部に運ばれ、物々交換の商品とされたり、飼料として家畜にも食べさせていました。

マフリー種が他の種に比肩できない能力を持つのは、そうした干し魚を、好きでもないのに無理やり食べさせられる為だとも言われています。
要するに、飼いならされたラクダと野生のラクダをかけあわせて、野性味の帯びたラクダを育てあげ、最高のラクダができあがりました。しかし、足枷をつけられたまま放置されるとは、雌ラクダもかわいそうです。

また、秘境に住む魔精の「ジン」という悪魔が気になってしまう。いったいどんな悪魔を想像していたのでしょうか?
そして王自らラクダにほれ込んで、ラクダを家畜として位置づけの高い動物にしたことも非常に面白いですね。

日本でもヨーロッパでも騎馬武者が一番かっこいいとされてきたが、砂漠ではラクダに乗る勇者が一番かっこいいのです。