2015/07/04

北方系のアラブキャメル


アラブでは祖先志向、血統重視の特徴があり、血統・血筋の尊重志向の中に、人名と関連を持ったラクダの種類が多いです。

アラビア半島にイスラム教が興る前に、半島北部の東、現在のイラクを中心にラフム朝(ササーン朝ペルシア帝国の庇護を受けていたが、イスラム勃興期前に消滅)が、西の現在のヨルダン、シリアを中心にガッサーン朝(ビザンチン帝国の庇護を受けていたが、イスラム軍に壊滅させられる)が緩衝地域として栄えていました。

ラフム朝の最後の王となったのがヌウマーン3世=ヌマーン・イブン・ムンジル王。
この王は砂漠を愛し、ラクダへの偏愛がある王でもあります。

この王とラクダ名とは切っても切れない程で、ラクダを駆使しての戦法はこの王の育てたラクダの子孫の活躍なしには語れないほどです。
ウスフール種

このラクダは他の種に比べやや小型でしたが、軽快で飛ぶように走ることからウスフール=「雀、小鳥」と名付けられました。
王は同じ出自の雌の中から、特に優れたものを選び、交尾させ、子を作り、雑種が混ざらないように係官を配して厳重な管理のもとに置きました。
これらのラクダ達は、サーフィール・アル・ヌマーン=「ヌマーンの雀たち」と呼ばれました。
これらの雀たちは、王の贈与品の中でも最高級品でした。
また後世の王侯、族長達もこのラクダ達を所有することが最高の栄誉と考えていました。
アスジャド種

このラクダの育ての親はヌウマーン王であり、堂々とした体でヌマーン王も祝祭日の乗用としています。
顔、首、鞍、鞍敷き、鞍覆いにきらびやかな飾りをつけて、晴れの行列の中心となっていました。
ウスフール種とは体型的にも、用途的にも全く対照的なラクダです。
シャーギル種

「後肢を上げるもの」という意味を持ち、この種のラクダは雄犬が小便をする際、習性として後肢をあげる癖から名付けられたものと考えられています。
ダーイル種

「不従順なもの、みだらなもの」のという意味を持ち、この種のラクダの気性の激しさを言い当てたもので、ラクダの持つ特性を名前につけています。
ズー・アル・カブライン種

カブルは足にはめる「枷(かせ)」のことであり、カブラインはその双数形のことです。 「二つの枷をもつもの」という意味を持ち、この種のラクダは元気が良く、はつらつとしており、前脚にうける枷だけでは足りずに後肢にも枷をつけたが、それでも飛び跳ね回っていたという特性を表しています。
マーリク種

このマールク種だけはヌウマーン王との関係がありません。
半島北東部に勢力を持ったバクル族のマーリク・イブン・サアドなる人物が手がけた優良なラクダの子孫です。
また、血統の高いラクダとそうでないラクダとの認識も特別な語を持って顕在化させています。
血統の高い、選ばれた、高貴なラクダはフッルといわれ、「何も拘束されない自由な」というラクダの意味です。
これに対して、素性が分からない両親から生まれたラクダはハージンと呼ばれ、「混ざり物」の意味で呼ばれる。
またこのハージンは人に対しても使われ、「出身の卑しいもの」、「奴隷女を母としたもの」という意味がこめられています。
アラブ社会では男尊女卑の文化が根付いているのが良くわかります。
日本では江戸時代は封建制度であり、明治維新後もあまり変わらず、第二次世界後、高度成長期を経てからやっと男女同権になりました。
(現在でも障害は多いかもしれないですが、)
ラクダの差別用語から人間へ転用されているところは、アラブらしいですね。