2015/07/06

魔性のキャメル伝承の解説


「たてがみ」

ヒトコブラクダは寒い冬期に毛が増え、その毛の利用も行われています。
冬には多少体がふくれるようになり、瘤(こぶ)が見事に張った立派な体になります。

しかし毛は豊かでも「たてがみ」を持つラクダは珍しいそうです。
「豊かなたてがみを持つラクダ」とは、「瘤の高い、または脂肪のついた、または肥満したラクダ」という意味を持っています。

「クダール」という人物
サムード族を直接的に滅亡へと導いた人物がいます。クダール・イブン・クダイラ。クダールとは「ラクダや他の動物を屠殺して料理する人」という意味があり、「屠殺者」あるいは「料理人」を意味していました。

彼は紅毛の碧眼で、近代以前は紅毛碧眼は嫌われており、美の基準は長く黒い髪であり、大きな円らな黒い瞳であったといわれています。

「クダールの9人の仲間」
クダールが神聖ラクダを殺し、それが原因となりサムード族全体を滅ぼしてしまうことになるのですが、クダールには9人の極悪人の仲間がいました。神聖ラクダを実際に殺したのはクダールと相棒のミスダウ・イブン・ムフリジでしたが、残りの者はそれをけしかけ、殺した後のラクダ肉の分け前にあずかったとされています。

「部族の水は一日は神聖ラクダに、一日は部族民に」と約束されていました。
一日おきにしか水場の水を使えない不便さは、日常生活を送る中で、特に女性には辛く、神聖ラクダの飲む水量も異常で、その日の井戸の水量を飲み干してしまう程でした。

翌日の農業用水、家畜用水、生活用水にも支障をきたしており、不信の輩には我慢の限界を越えることとなっていました。
クダール達に神聖ラクダを殺してしまうようにそそのかしたのは女達でした。

水無し日に水の代わりにぶどう酒を飲ませ、クダール達を破壊行為に走らせました。

「神聖ラクダの殺害」
クダールは剣を抜き放って雌ラクダのウルクープを一撃しました。
「膝からかかとにかけての腱」のことで、人間の「アキレス腱」に当たります。さしもの神聖ラクダも後脚から崩れ倒れたのでした。
ラクダは背の高さが二メートル近くもあるため、殺すのも容易ではありません。
倒れたラクダの前に回り、首の部分の頚動脈を掻ききりました。
子ラクダも驚いて岩山の方へ逃げていったのですが、簡単に殺されてしまいました。

そして殺した二頭のラクダの肉をより分けて、九等分し、くじ引きで順番に良い所から取り去っていきました。
こうして四日後天罰が下り、?天からの叫び?即ち雷光が彼らの心を切り裂いたのでした。

以後「サムード族のクダール」は「極悪人」「全体の和を乱す者」「独善者」の意味として使われ、「紅毛の碧眼」は嫌悪表現に用いられています。
この魔性のキャメルの伝承はプレ・イスラム時代において、昔話として民衆に定着しました。

ラクダを殺すことは、神の天罰が下ること。また、悪い事をする人物像もこの物語からアラブ人の偏見として刷りこまれたようです。
ぶどう酒も悪い酒として偏見をもたれたかもしれませんね。