2015/07/18

大声キャメルと詩人


ウマイヤ朝時代(661年〜750年、イスラム史上初の世襲イスラム王朝)に活躍したズー・ルマンという詩人がいました。
彼は、イスラム期以前の遊牧民的気質の詩風を残した最後の詩人といわれています。
ズール・マンという名の意味は「ルンマ(ラクダの手綱)の持ち主」だそう。

砂漠を旅していた彼は、あまりの喉の渇きに耐えかねて、折りよく出会ったテントに水を所望しにいきました。
テントから出てきた娘マッヤは「どうぞ!ズー・ルンマさん!」と語りかけて水を差し出しました。彼が肩にルンマをかけていたためにこう呼びかけたのです。
彼はその娘の美しさに驚き、一目ぼれしてしまい、それ以降多くの詩を彼女に捧げました。

彼の愛用しているラクダはサイダフといい、「大声でいななく馬」という意味でした。
彼がイラクのバスラに向かっていた時、バスラの知事ビラール・イブン・アビー・ブルダの雨乞いの行事に出会いました。
彼は、小高い丘の上から天空に向かって祈り声をあげるその善行に感銘して、サイダフに大声で鳴くように語りかけたのでした。
サイダフはこれに応じてあらん限りの大声を天に向けて放ち、この雨乞い行事に参加しました。

すると知事のビラールはとても喜び、「これ伴の者、あのサイダフの所有にラクダの飼料の荷を与えてあげなさい」と命令したといいます。
雨乞い行事はどこの文化圏でも共通しています。雲を呼び、稲妻を呼ぶために、大きな音や炎・火をかかげる。

今回はラクダが主人「手綱の持ち主」の求めに応じて参加した逸話です。
ラクダが天を突き抜けるほどの大声で雨乞いをするのは、アラブ独特の文化です。

ラクダが預言者の特別な乗り物であり、天と通じる神聖な動物という想いが強いのか。
そのラクダの声は天に通じるということなのか。
いずれにしても、アラブのラクダは日本のシャーマン的な存在の一面もあるのかもしれないと私は考えます。